スマイルプリキュアを振り返って。全体的に印象に残っている点と雑感。
 プリキュアの人数は5人(バッドエンドプリキュア、ロイヤルキャンディーを含めると11人で過去最高数)。同じく5人でプリキュアした5年前の『Yesプリキュア5』ではキャラの人気格差がはっきり表れ、不人気キャラは空気と化し、その翌年の『5GOGO』ではさらに人数が増えて6人となり、各プリキュアの話の消化が追いつかずにストーリーがチープなものとなってしまい、視聴率、おもちゃの売り上げともに過去最悪に陥ったというジンクスがある。
 3年前の名作『ハトプリ』では主要プリキュア4人+ダークプリキュアキュアフラワー(、コピープリキュア×4)の6人(10人)がプリキュアした結果、ハトプリ特有のマイルドな仕上がりの中にも、ストーリーの大筋に絡むムーンライトとブロッサムに重きを置かれたという事実がある(ちなみにフレプリでは4人中2人は完全に霞)。
 あのハトプリでさえ、キャラのバランスに慎重にならざるをえなかった主要プリキュア4人の数を上回るスマイルに、果たして成功の望みはあるのか、さらに魅力的で完成度の高い作画が大きい子に対しても妙にあざといのも大丈夫なのか──スマイルはこんな不安の中、放送開始したアニメだった。
 ハトプリは8割を伏線とその回収に徹底する構成だったのに対し、スマイルは8割をドタバタギャグに当てると言う大胆な作りで、戦闘シーンはセーラームーンよろしく端的で短く、しかも「なんかイイハナシだったなあ」と思わせる勢いの良さと、達成感、爽快感を持ち合わせるキャラクターアニメである。
 前作のスイートの喧嘩が多発する作風に比べテンポだけは格段に良く、また5人のプリキュア全員に空気を作ることなく、30分間キャラクターものとして押し切る構成はかなり成功しているように思われる。
 内容がない話が多いが、節目節目はシリーズ内でも目を見張るほどシリアスなテーマを扱っているのも特徴。特に23話の「プリキュアを続けるかどうかの選択」、47話の「ずっと希望のために戦っていたが、私たちの希望とは具体的に何なのか」、48話(最終回)の「希望を知った。だから相手の言う『絶望』も知った。さてどうする」というコンセプトは新しい。
 テーマと言うと、そもそもスマイルのコンセプトは「面白そうなことはやる!」とスタッフが言っており、例えばキュアピースの変身シーンではジャンケンをする、周期で変わるED、過去作品のキャラの名前とキャラソンが登場、ロボ化、妖精化、ロリ化、獣化、小型化、妖精のプリキュア化、ヒーロー、人外女装などが顕著。またギャグだけにとどまらず、19話では名前の由来を調べるネタでキラキラネーム問題を、37話では生徒会選挙の話で政治を風刺するなど、これまでにないテーマを扱ったことも。
 スマイルの問題は2点で、1点目は話のほとんどはギャグ重視で内容がなく、勢いは良いがそれ以上のものはないという点。おもちゃの売り上げを見る限り、キャラクターものとしてウケたのならば必ずしも失敗ではないが……。
 2点目は最終回がオールスターズDX3のまんまだった点。大きな決断をするというのはストーリーとしてドラマティックではあるものの、ハッピーエンドでの終わり方がスマイル特有の完全な理屈無視で、「お星さまにいっぱいお願いしたクル!」で解決というのがどうにもこうにも。スマイルらしいといえばその通りだが、泣きシーン連発の最中、ポップが完全におまけなのがなんとも気の毒に思う。
 ちなみにフレプリから始まり、ハトプリ、スイート、スマイルで梅澤プリキュアは終わりを迎える。
 最終回の流れは以下の通り。
 フレプリ:メビウス様に訴えかけるも拒否される。
 ハトプリ:我々の理解をはるかに超え、「くらえ、この愛!」ですべて解決。
 スイート:相手のことをすべて飲み込んだうえで許す。
 スマイル:自分を理解、相手も理解、飲み込んだうえで「がんばる」という答えを出す。
 いやぁ、ギャグと勢いの話を48回も1年間ぶっ通しで見ると謎の達成感が出てくる。
 最終回のED見ても積み重ねてきたものと、キャラへの愛がよく分かる。最初の一枚絵がラストなのも締まった感じ。
 よくここまでやったものだ。