5月の頭に発表する論文の訳をチューターさんに提出。
 その後何をやるでもなく、先輩に連れられ先端研のアンダーグラウンドへ足を踏み入れた理之貫らは卓球台を目の当たりにした。
 よく分かんない物が大雑把に置かれたその別天地は全然先端っぽくないけど、そんな味気のない空間にしっかりと卓球をするスペースが確保されている当たりが実に先端だぜ、と無駄に感動する理之貫。
 一時間くらい卓球やったけど、まあ一度も勝てなかった。
 高校の時はもっと勝てた。原因をいろいろ考察したが、ペンホルダーのラケットがなかったからというもっともらしい仮説を経た後、結論は寝不足だからといういかにも中二的な結論に落ち着いた。あるいは単純に下手なのかもしれない。
 このアンダーグラウンドは、しかし携帯電話が圏外になるという欠点がある。
 それにしてもこんな場所を見つける先輩はすごいを通り越して、怖い。どれだけ先端研にいついてるんだろう?
 話は飛んで、昨日の話。昨日は呑み。M2の送迎会と新4年生歓迎会。
 一次会は初めての『つぼ八』。結構なボリュームの料理次々がやってくる2時間40分くらいの呑み放題で3000円ならまあまあな感じ。隣の『てしお』の方が好みだけど。ビールをたらふく飲んで水腹になった。
 異動されてしまわれるすごくまじめな准教の先生にギャンブルとかはされないんですかと先輩らが尋ねたところ、「僕は研究というギャンブルを常にやっているよ」みたいな返答を即座に寄こされ、みんなで絶句していたというそんな一次会。
 二次会は研究室で、理之貫は他の誰も呑めない癖に無駄に開けられた芋焼酎を30分くらいで半分空ける。その後、1時間弱でFour Rosesを3分の1ほど一人で空けるというわりととんでもないペースで呑んだ。焼酎洋酒ということで、さすがに酔ったが、寝ると次の日にはけろっとしてた。最近胃の調子が戻ってよかった。
 12時半くらいまでだったけど、何時までいても何もとがめられない研究室ってステキ。普通に電気がついてる部屋が他にもあるね!

 今度はまじめな話。
 なんか明日くらいからいなくなってしまわれる先輩が唐突に「教える」とおっしゃられ、この研究室でやってる研究のエッセンスを語りだされる。
 なんとなくやってることを知っていた理之貫は、それらを実に分かりやすく、かつドラマティックでありながらも論理的な説明を展開され、目から鱗の勢いでハートキャッチされてしまう。
 すげー、なんとなく分かってたけどこの研究室のテーマ、新しい分野すぎて教科書に載るどころかマジでノーベル賞クラスの研究だよ。
 そういうトピックがすでに身近にあるという今の環境、さらにこれからの研究、その両方から生じる不安で胸が押しつぶされそうなプレッシャーを感じつつある心境。理之貫は今、ネルフ地下で第一使徒を見ちゃったシンジくんのような心境なのである。
 この不安だけで1週間くらい寝れそうにない。